“動画”が変えるリーシング戦略 ─ バーチャル内覧からブランディングまで

オフィス不動産のリーシングにおいて、写真や図面だけでは物件の魅力を十分に伝えきれない時代になりました。
テナント企業は短期間で複数物件を比較検討するのが当たり前となり、「どれだけ具体的にイメージできるか」が内覧や問い合わせの意思決定に直結しています。
そこで注目されているのが動画の活用です。動画は、空間の広がりや雰囲気を直感的に伝えることができ、見る人の感覚に直接訴えかけます。
近年の調査によれば、マーケティング全般において「動画を見たユーザーは見ていないユーザーよりも購入や問い合わせに至る確率が64〜85%高い」とする報告があります(HubSpot、Wyzowlなどの海外調査より)。
オフィス不動産のリーシングにおいても、動画を見た人は内覧予約や資料請求といった行動に移る確率が高い傾向があり、CVR(コンバージョン率)改善の裏付けとなっています。
CVR改善データが示す「動画制作の必要性」
動画の有効性は感覚論ではなく、データとしても明らかです。Wyzowl社の2023年調査では、動画マーケティングを導入した企業の87%が「売上増加に寄与した」と回答しており、またランディングページに動画を追加した場合、CVRが最大80%改善するとのデータも報告されています(EyeView Digital調査)。
これらは消費財やサービス業に限らず、不動産分野でも同様の傾向が見られます。実際に、バーチャル内覧動画を用意したオフィスでは、資料請求率や内覧率が1.5〜2倍に向上したという事例もあります。
これは、動画が「自社が働く姿」を想像させる力を持つためです。単なるスペックや条件比較ではなく、入居後のリアルな体験を提示することが、テナントの行動を強く後押しするのです。
つまり、動画制作は単なる付加価値ではなく、リーシング戦略において必須の投資と言えます。
撮影対象は区画だけでなく「全体の体験」
動画で伝えられるのは、募集区画の内部だけではありません。
テレカンブースや執務スペース、ファミレスブース、リフレッシュスペースなど、実際の働き方を支える多様なエリアを撮影することで、テナント企業は「自社の社員がどのように過ごせるか」をリアルに想像できます。
また、セットアップオフィスであれば、家具や設備の使い勝手を動画で見せることで、利便性を直感的に理解させることが可能です。
さらに、区画以外にも共用部として提供される会議室やラウンジ、カフェスペースなども動画で紹介すれば、ビル全体の付加価値を訴求できます。
テナントは「オフィス内の環境」だけでなく「ビルが提供する総合的な体験」を重視しており、動画はそれを余すことなく伝える最適な手段なのです。
周辺環境や街の雰囲気を伝える
物件そのものの魅力に加えて、周辺エリアの雰囲気を伝えることもリーシングにおいては欠かせません。
近隣の飲食店、商業施設、交通アクセス、駅からの動線といった要素は、社員の働きやすさや採用活動への影響に直結するため、テナント企業が重視するポイントです。
動画では、駅からビルまでの徒歩経路を実際に歩いて撮影したり、エリアのにぎわいや街並みを映し出すことで、写真やテキストでは伝えきれない「街の空気感」を可視化できます。これにより、単なる物件比較から「この街で働く体験」へと評価軸を広げることが可能となり、リーシングを有利に進められます。
特に成長企業やスタートアップは、社員にとって魅力的なエリアを重視する傾向があるため、周辺環境を表現する動画は成約に直結しやすいのです。
人を入れた撮影で「働くイメージ」を強調
空間を撮影する際に、家具やレイアウトだけを映す方法も有効ですが、さらに説得力を高めるのが「人を入れた撮影」です。実際に会議室で打ち合わせをするシーンや、ファミレスブースで気軽に相談している場面、リフレッシュスペースで休憩を取る姿を撮影することで、動画は単なる内装紹介から「働く体験のシミュレーション」へと進化します。
人の動きが加わることで空間の広さや使い勝手が視覚的に理解しやすくなり、入居後のイメージがより鮮明になります。さらに、モデルとなる人物の年齢層や服装を工夫すれば、ターゲット企業に合わせたイメージ訴求も可能です。
動画に「人」を取り入れることは、視聴者の共感を得て行動を促すために欠かせないテクニックなのです。
まとめ
動画は、オフィス不動産リーシングにおいて最も説得力のあるプロモーション手段のひとつです。学術調査や実績データでもCVR改善が証明されており、導入すること自体が成果につながる投資といえます。
さらに、区画だけでなくテレカンブースや執務スペース、リフレッシュエリア、共用部、周辺環境までを撮影対象に含め、人を登場させることで「働くイメージ」をより鮮明に描くことができます。こうした動画は、単に物件を紹介するだけでなく、街やビル全体のブランドを強化する力を持っています。
オーナーにとって動画制作はもはやオプションではなく、物件価値を最大化し、空室リスクを下げるための必須の施策なのです。


