資料から体験へ ─ VR・3Dツアーの導入がリーシングに与えるインパクト

不動産プロモーションは「体験の時代」へ
従来のオフィス不動産プロモーションは、図面・マイソク・写真といった「資料中心」で構成されてきました。
しかし、情報が溢れる現在、テナント企業は短時間で複数物件を比較検討し、即座に候補を絞る傾向にあります。
この段階で、静止資料のみだと見落とされたり記憶に残らなかったりするリスクが高まります。そこで注目されるのが、VR(バーチャルリアリティ)、3Dツアー、ウォークスルー動画などの「体験的コンテンツ」です。
これらはオンライン上で利用者に物件空間を「歩いて回っている」ような感覚を与え、物件の魅力を直感的に伝えます。こうした体験型プロモーションは、ただ資料を並べるのではなく、見込みテナントの心に残る強い印象を残すことで、内覧予約や問い合わせを引き寄せることが可能になります。
VR・3Dツアー/ウォークスルー動画がもたらすCVR改善
VRや3Dツアーを導入した物件は、従来の静的な資料のみの物件と比べ、問い合わせ率や内覧リクエスト等の CVR(コンバージョン率)が大幅に改善する傾向があります。
調査データによれば、3Dツアー導入物件は、内覧リクエストが平均で約2倍に増加するケースがあります。また、動画形式によるウォークスルーを加えることで、閲覧者が物件内部の動線・空間感・利用可能な共用部などを把握しやすくなり、意思決定が早まるという実績があります。
さらに、ウォークスルー動画を制作・公開した不動産案件では、「公開前より問い合わせ数が著しく増加した」「動画を見たユーザーの資料請求率や内覧申込み率が、動画なしの資料のみの案件の1.5〜2倍になった」という事例も報告されています。
これらのデータは、VR / 3D /動画を「ブランディングや魅力演出の飾り」ではなく、リーシング戦略におけるコア施策として導入すべきものだという説得力をもたせています。
撮影対象は区画だけではない──空間全体を体験させる設計
VR・3Dツアーやウォークスルー動画を効果的にするためには、ただ区画内部だけを映すだけでは不十分です。オフィス物件では以下のエリアも含めることが重要です。
- 執務スペース、デスク配置の様子
- テレカンブースや個別のワークブース
- リフレッシュ/休憩スペース、ファミレスブースなどの柔らかいエリア
- 会議室・ラウンジなど共用部
- エントランス・受付・外観
これらを順に見せ、動線を意識したウォークスルーを設計することで、ユーザーは「この建物に入ってから働き始めるまで」の流れを仮想体験できます。
また、現地の雰囲気を伝えるため、家具や照明、植栽といった調度品や外装・内装の質感も丁寧に映すことが望ましい。人が居るシーンを入れると、空間の使われ方やスケール感がぐっと伝わりやすくなります。
「ウォークスルー動画/BIMパースを活用した体験設計」の具体的な要素
既存の事例を参考にすると、以下のような要素を組み込むとより高い効果が期待できます:
- BIMパースモード:設計段階のモデルを使って、建材・設備・空間構造を3次元で再現。設計図面や平面図と整合性を保ち、修正が比較的容易。
- ウォークスルー動画(約1〜2分):時間的に長すぎず、主要なポイントをテンポ良く見せる構成。例えば外観 → エントランス → 共用ラウンジ → 会議室 →区画執務スペース → 動線 →外の環境 という流れ。
- VRウォーク機能:視点を複数設けて自由に見回せる360度動的ビュー、スマホ・タブレット・PC対応。専用ゴーグル不要でアクセスできるもの。
- 複数背景プラン:背景を白地、バーチャル背景、現地写真をはめ込んだリアル背景など複数選択可能にすることで、用途・ターゲットに応じてトーンを変えられる。
これらの手法を採用することで、物件資料を体験型に進化させ、「見せる情報」から「感じさせる情報」へと価値をシフトできます。
周辺環境と動線の可視化も含めることの重要性
物件内部だけでなく、外部動線や周辺環境を動画/3Dツアーで可視化することも、物件の印象を大きく左右します。具体的には駅からの徒歩ルート、交差点のにぎわい、近隣施設(飲食店・カフェ・商業施設・コンビニなど)、交通の接続性などを映像で表現することです。
そうすることで、テナント企業は「社員が通勤する導線」「昼食や打ち合わせで立ち寄る場所の利便性」など生活の“体験”を事前に想像でき、候補物件としての魅力が飛躍的に上がります。
ウォークスルー動画/VR・3Dツアー導入のコストとスケジュール感
このような体験型コンテンツを用意するには、多少のコストとリードタイムがかかります。参考事例では、設計データ(CAD/BIMデータ)が揃っていれば、動画/パース納品まで通常1ヶ月程度の時間がかかるものがあります。
背景プランやVRウォークホームなどオプション要素を加えると若干追加時間・費用が必要ですが、それでも十分にリーシングへの投資効果を上回る成果を上げることが可能です。
まとめ
VR・3Dツアー、ウォークスルー動画、および BIM パースを取り入れることで、物件資料は単なる静的な情報源ではなく「体験を提供するプロモーションツール」へと変わります。資料を見るだけでは得られない動線の理解、空間の質感、周辺環境や働き方のイメージが、オンラインで事前に体感できることが、検討企業の心を動かします。
こうした体験型プロモーションは、内覧前段階での興味を高め、成約までの期間を短縮し、空室リスクを減らすための強力な投資です。
導入コストやスケジュールを踏まえても、リーシング戦略におけるVR/3Dツアーの価値は明らかであり、今後のプロモーション施策の中心的な柱とすべきでしょう。


